蛇の爪
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2006.08.27  幻想運河 <<21:05


幻想運河幻想運河」(有栖川 有栖)
 ミステリではあるけれど探偵は登場しません。もちろんノン・シリーズ。作家自身も「いつもより本格であろうと肩肘張らなかった」みたいなこと書いてました。それでもジャンル分けをするならミステリ。普通のミステリに比べ謎解きよりも人間描写の比重が大きいということ。
 大阪とアムステルダムが舞台になります。それぞれで事件が起こり、二つに密接な関係がありながら別の事件であり。有栖川有栖のあの涼しい風のような青春の空気感が全編を漂っていて、悲しみはあるけどドロドロしない。
 ただ、動機が登場人物たちにとっても納得のいかないままっていうのは消化不良。私(読者)にとって現実感のない動機でも、作品世界の中でアリなら読み手としては納得できるしするべきと私は考えているんだけど、この本はそこがひっかかった。

 村上春樹の「象の消滅」読了。読んでみたら、17編中2編は未読のものでした。というか読んでない短編集がまだ1冊あったらしい。探さないと。
 それから、妹2をミステリにはめるべく図書館で借りてこさせた「怪盗グリフィン絶体絶命」(法月綸太郎)を読み始めました。まだほんの数ページだけど、評判がいいので先が楽しみです。

No.339 / 有栖川有栖 / Comment*0 / TB*0 // PageTop▲

2006.08.02  孤島パズル(有栖川有栖) <<00:16


孤島パズル孤島パズル」(有栖川 有栖)
 学生アリス編2編目。今度は孤島でのクローズドサークル。
 そしてお約束の台風直撃、密室殺人、通信手段は断絶。
前作から引き続き、最も重要視されるのは“誰ならそれが可能だったか?”江神さんがアリスを相手に推理の“答え合わせ”をしていく場面、読みながら、そうそうと頷きながら、あっそうかー分かるはずだったんだーこれ気付いてたんだもの!となるのが悔しい(笑
 有栖川作品でちょっと物足りないのは、隔絶した狭い世界での連続殺人でもそれほど奇異さ・不気味さを感じないこと。論理展開は執拗なほど緻密でギチッと作り込まれてるんだけど、謎の提示の時点で血なまぐささとか「げーマジでー」感が薄い。死体弄りが無いからかもしれないし、筆致がロマンチックかつ淡々としてるからかもしれない。
 私がミステリに求めてるのは日常から非日常への飛躍、そして非日常が煮詰まった緊張の頂点から論理の力技で日常へ引きずり下ろされるギャップの爽快さなので、有栖川有栖は面白くてもドハマりまではどうしても行かないなあ。
 許せなかったのは解説。シリーズの先の内容に触れるなよ!!
 当然ネタバレではありませんが、登場人物の背景について語られる部分があります。ミステリって雰囲気にどっぷり浸かって読むのが楽しいわけです。でもたくさん読んでるとパターンも分かってくるし、一気に読み通せないこともあるし、読者側だって意識して物語に取り込まれようとしながら読むんです。そして、雰囲気に取り込まれるためにはものすごく細かい情報の積み重ねがとても大事なんです。それそのものを芸風にしてるのが京極夏彦ですね。
 それなのに、重要で重たい話題を考察まで含めて先に読んじゃってたら、肝心のその場面で「あーこれね」ってなっちゃうじゃないか! 楽しみの何割かはこれで削られてしまったわけです。
 ミステリにおいて先入観はほとんど禁忌だと思う。解説書いてるのも作家だそうだが、文庫を読む人間は四六版から入って再読のために文庫を手に取ってるとでも思ってるのだろうか。


No.324 / 有栖川有栖 / Comment*0 / TB*0 // PageTop▲

2006.07.28  月光ゲーム―Yの悲劇’88 <<00:33


月光ゲーム―Yの悲劇’88月光ゲーム―Yの悲劇’88」(有栖川 有栖)
 有栖川有栖デビュー作にして学生アリス編一作目。学生アリス編と作家アリス編はパラレルになっていて、学生アリスが成長して作家アリスになったんではないというところがミソだと思う。
 大学に入学したアリスが入った推理研は夏休みに山にキャンプに行く。そこで出会った他大学のサークルと仲良くなり皆でキャンプファイヤーなどを楽しむが、3日目の朝目覚めると中の1人が刺殺体で横たわっていた。書き置きを残して姿を消した女の子、休火山のはずの山の突然の噴火、山崩れで下山もできなくなったキャンプで、夜が開ける度にメンバーが減っていく。いわゆる「嵐の山荘」ものだけど、孤立の原因が火山の噴火ってのは初めて見た。派手だな〜(笑)登場人物の多さに閉口したって話はよく聞いていました。たしかにちょっと区別がつき辛かった。
 内容については、言い方が悪くなるけど、著者が最重要視しているのが「犯人当て=誰ならそれが可能だったか」で、人物描写や動機ははじめからそんなに大事なことだと思ってなさそう。そこにちょっと引っかかりました。ロジックは収斂していくけど、物語としてのカタルシスはちょっと弱いと思う。あと全体的に文体がこなれてないというか、ざわついていて、有栖川有栖の最近の作品から読んだ人は違和感を感じるかもしれない。


No.349 / 有栖川有栖 / Comment*0 / TB*0 // PageTop▲

2006.07.12  6日ぶりの読書 <<00:30


「ジュリエットの悲鳴」(有栖川有栖)/「たけまる文庫 謎の巻」(我孫子武丸)を読了。
どちらもスタンダードなミステリとはちょっと違った捻りの入った短編集。

ジュリエットの悲鳴ジュリエットの悲鳴」(有栖川 有栖)
ノンシリーズの短編集。有栖川有栖の短編はいつも温度の低い皮肉やブラックジョークが効いてて、読んで薄ら寒くなるのが心地良い。
今回は犯人当ての本格ミステリではなく、倒叙・SF仕立て・夢・鉄道などモチーフもテーマも豊かです。「タイタンの殺人」と「夜汽車は走る」が好き。
また、この本は装丁がきれいで、文字組にも一工夫ありビジュアル面も面白い。目次を全部横書きにしていることや、カバーに日焼けしたような色で枠を付けたり、紙も白でなくややクリーム色で、敢えてわずかにかすれさせた印刷など、わざと古い本に見せようとしている演出が古本好きには堪らないです。機会があれば是非ハードカバーで読んで欲しい。


No.310 / 有栖川有栖 / Comment*0 / TB*0 // PageTop▲

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